浮世絵学**/2017-12-09 東京美術倶楽部 馬淵明子先生(国立西洋美術館館長)の講演 酒井雁高(浮世絵・酒井好古堂主人) [HP: ukiyo-e.co.jp]
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2017-12-09現在(2018-1-17更新)

酒井雁高(浮世絵・酒井好古堂主人) [HP: ukiyo-e.co.jp]

国立西洋美術館館長・馬淵明子先生が、東京美術倶楽部(会員制)で「北齋とジャポニスム」と題して二回、講演を行った。

むろん日本美術、特に浮世絵は、北齋に限らず、フランスだけでなく、ドイツ、オーストリア、フィンランド、イギリス、アメリカまで影響を及ぼした。

1826、シーボルト(1796-1866)が、江戸参府で五週間、滞在した。書籍、素描、絵画、工芸品などを集めた。これらをオランダへ持ち帰り、1832-1851、Nipponとして、多数の挿絵を取り入れ、紹介した。

日本美術の西欧への影響は、1840s−1850s年代、北齋を初めとした森羅万象の挿絵、また型紙(伊勢白子しろこ)が工芸意匠、工芸デザインとして、各方面のヨーロッパの画家、版画家、評論家などに影響を齎した。

まだ爲一(ゐいつ)期の冨嶽三十六景などは、知られていなかった。

◯万国博覧会で、初めて大々的に日本文化が西欧に紹介された

尤も大きな影響は、ヨーロパ各地で開催された万国博覧会で日本、および日本文化、日本風俗、動植物、景色などがエキゾチズムを伴い、脚光を浴びたのであろう。特に林忠正(1900パリ万博の事務長)が印象派の画家と交友関係を結び、浮世絵を通して、詳細な日本文化、多岐にわたる日本風俗を紹介したことは特筆されることである。

万博
1851ロンドン
1855パリ 1 *ロンドンに負けてならないと頑張る
1858ブリュッセル
1862ロンドン 1861文久使節団
*1859オールコック駐日総領事、収集
1867パリ 日本茶屋
*薩摩は幕府を出し抜く
1873ウィーン

1884ウイーン、陶磁器展

1878ぱり 3

1888ビング、浮世絵展覧会
1892日本で、林が小林文七に浮世絵展
1893BN、ビングから北齋、廣重を買う
1893ML、浮世絵の展示
1899林、錦絵16万枚、絵本1万冊をヨーロッパへ
1900パリ 林忠正
*1881-1885ゴンス、日本美術
*1882若井、資料をフランス
*1883マネ没
*1884.01美術店を開業
*1886.05ParisIllusure LeJapon
*1894フランスより、教育文化功労賞
*1900レジョン・ドヌール賞

1900ウイーン、浮世絵展

1903ウイーン、浮世絵展
*1905帰国、西洋近代美術館を企画1900パリ 林忠正 *伊藤博文により、万博の事務長を任命された林忠正は、日本の浮世絵を紹介した。日本政府は、その後、日本の物産を売り込むだけに奔走し、藝術とは全く無縁の商業主義となってしまった。林により役職を奪われた官僚、商売だけを優先する陶磁器業者は林忠正に対して誹謗中傷を行った。**木々康子(「陽はまた昇る」の著者)のコラムも必読である。

1860s−1870s-1880sになって、その影響はヨーロッパ中に拡がっていった。

◯ドイツ、オーストリアのヤポニスム* 2017-12-20追加

*Japonismus ドイツ東洋文化協会の大胡真人さんからの情報、日本では展覧会も開催されていないのが残念

1980Wichmann, Siegried: Japonismus. Ostasien – Europa. Begegnungen in der Kunst des 19. und 20. Jahrhunderts., Schüler   *本書はヤポニスムの集大成図録である。

1980Berger, Klaus:  Japonismus in der westlichen Malerei 18601920 (Studien zur Kunst des neunzehnten Jahrhunderts), Prestel-Verlag

1990Pantzer, Peter, Johannes Wieninger and Peter Noever: Verborgene Impressionen – Hiden Impressions – Japonismus in Wien 1870 – 1930. Österreichisches Museum für angewandte Kunst, Wien Ed Seitenberg

◯私見ながら、主要な影響の概要を纏めてみた。

1 主題:大衆、庶民が中心、宗教絵画から開放 *これが尤も重要な事柄

元来、西欧の美術は貴族、王族に属していたため、殆どが教会の宗教絵画、また王族の肖像画であった。庶民が絵画の題材になることなどなかった。浮世絵を見て、初めて庶民、大衆が題材となった。マネ(1832-1883)、ドガ(1834-1917)、セザンヌ(1839-1906)、モネ(1840-1926)、ゴーギャン(1848-1903)、ゴッホ(1853-1890)など、その衝撃が作品に活かされ、表現されている。

2 構図:前面に物体を配置し、後方との奥行きを現す

焦点遠近法でなく、構図による遠近法。前面に物を配置し、奥行きを出す画法は異色であった。北齋だけでなく廣重などの構図も、特に俯瞰図法、垂直線描法(画面前面)、装飾性(略画、省筆法)などが、西欧に衝撃を与えた。

3 描法:物の形を全て、線描、略画で表現

西欧の描法は、面(めん)で構成する。しかし日本の浮世絵は全て線描で表現する。しかも、人物、動物、植物、景色の的確な描写は、真行草の略画、線描など、それぞれの持ち味が発揮されていた。北齋(1760-1849)は、むろん蕙齋(けいさい)(1764-1824)の線描、略画を更に発展させたことは間違いない。省筆による適確な素描(スケッチ)が、西欧の色々な藝術家に衝撃、影響を与えた。しかし、日本は、書画双絶、書画同一と称するように、線描で把握する。

4 藝術(artの訳語):詩が最上位に位置づけられる。

日本の絵画は、源氏物語を初めとして、全て文学に関連していると云っても過言ではない。

連歌、俳諧、和歌、狂歌から俳画、狂画、つまり略画が生まれた。

ヴァザーリ(1511-1574)を引用するまでもないが、文学の一つ、詩歌が最高の位置にある。次は建築(美術用語は殆どが建築用語である)、彫刻(大理石など巨大なもの、建築にも関連する)、絵画の順列になっている。この点、日本美術は浮世絵に限らず、すべて文学作品に関連している。

詳細については、図録(400ページ余)を御覧いただきたい。

念のため、附録の項目を掲載する。

・作家解説

・葛飾北齋略年表

・北齋受容およびジャポニスム関連年表

・藝術家および工房アルファベット(略伝)

・主要参考文献(ジャポニスム関連は編年順、欧文文献は著者アルファベット順、展覧会図録は編年)

・邦文文献(著者、五十音順)

現在、国立西洋美術館で開催されている北齋とジャポニスムは、馬淵明子先生らの研究成果が存分に発揮あれていて、これまで全く知られていない画家、版画家を網羅した、詳細な比較絵画展となっている。

今回、借りることの出来なかった西欧の作品も図版で充分である。北齋ほか、廣重など日本の浮世絵画家の影響を受けなかった西欧画家はいなかったと云っても良いであろう。

 

エッフェル塔が、1789フランス革命から100年後に、つまり1889作られたということも力説されていました。

フランスだけでなく、ドイツ、オーストリアなどユーゲントスティル、イギリス、北欧まで影響を及ぼしている。

森羅万象の人物だけでなく、動物、植物、景色など、あらゆる分野に及んでいる。しかも、尤も表現のし難い、描写の難しい水、つまり波を生涯にわたり、描き続けている。

まだ来月(2018.1.28)まで開催しているので、早めに観覧して欲しい。

尤も有意義な浮世絵(版本の挿絵)と西欧美術(挿絵が大半、多少、油絵もある)の比較、影響の展覧会である。

*少し、ジャポニズム(英語)、ジャポニスム(フランス)、ヤポニスムス(ドイツ語)に関することを纏めてみた。

浮世絵学**/2017-12-09 東京美術倶楽部 馬淵明子先生(国立西洋美術館館長)の講演 酒井雁高(浮世絵・酒井好古堂主人) [HP: ukiyo-e.co.jp]

酒井 雁高(がんこう) 学芸員 curator
浮世絵・酒井好古堂 [HP: ukiyo-e.co.jp]
[浮世絵学]文化藝術懇話会  浮世絵鑑定家
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